刑事コロンボVS日高屋チキチキ10番勝負! 第1試合「指輪の爪あと」vs和風つけ麺(執筆者:白樺)
皆さんこんばんは!(まさか本当にやるとは思いませんでしたか?)
「指輪の爪あと」vs和風つけ麺
日高屋のつけ麺は今回が初体験。
和風つけ麺(普通盛り)510円なり。
麺はラーメンと共通らしく、つけ麺ぽくない細麺ながらしっかり冷水で締めてあり、ぷるんとしたみずみずしい歯ごたえがあります。ただ、水切りがやや甘かったのか、麺の底の方がやや水っぽかったのが残念といえば残念なところ。
歯切れの良さなら、「指輪の爪あと」も負けてはいません。冒頭からスピーディに展開する物語。銃声からスリリングに始まり、テンポの良い会話劇の中で舞台設定を過不足なく伝えてくれます。画面の緊張が破られる殺害シーンの描写は素晴らしい!犯人・ブリマーが本性をあらわにする「豹変」シーンは、ぜひ一度注目して欲しい名演技。顔を憤怒に歪ませ、ドアを蹴っ飛ばす姿がすさまじいです!
スープは、魚介豚骨系のとろりとしたつけ汁を見慣れた人には、ちょっと物足りなく見えるかもしれないシャバシャバ系。しかし口を付けてみると醤油ベースにガツンと濃厚なカツオの風味が効いています。なるほどこれは「和風」つけ麺。
醤油のカエシもかなり辛く、味はつけ汁としても濃いめですが、バランスがきちんと成立しているのは、一見、目立たない動物性のダシが意外に良い仕事をしているからかも。
濃いと言えば、「指輪の爪あと」の映像に注目して頂くと、ブリマーの登場する場面はいつも、影の濃いコントラストの強い画面作りがされていることに気づくと思います。
その一方で、コロンボさんはその初登場から、カリフォルニアの眩しい白い光の下にいます。この光/影という対比はベタながらも、まさに〈影から光へ〉の解決シーンに鮮やかに収束する構成の巧みさは見事としか言いようがありません。
(※以下、ネタバレ反転)「収束性」というキーワードは脚本を書いたレビンソン&リンクの作劇上のこだわりの一つ。今作でも、事件はブリマーがケニカット氏に渡した、婦人の不倫を隠す「偽の情報」に始まり、コロンボさんがブリマーを引っかけた「偽の情報」に終わるという、起結の対構造が仕組まれています(ネタバレ終わり)
本作の演出を務めたバーナード・コワルスキーは、シリーズ史としては「自縛の紐」「ビデオテープの証言」「ルーサン警部の犯罪」を演出した他、『X星から来た吸血獣』『吸血怪獣ヒルゴン』『怪奇!吸血人間スネーク』など(三部作なのかな?)聞いただけでわくわくするようなB級テレビ映画を撮っている人。本作の暗い影の感じも、確かにスリラーっぽさがありますね。
ちなみに『吸血怪獣ヒルゴン』のプロデューサーはもちろん、ロジャー・コーマン御大です。
つけ麺に戻ると、トッピングはチャーシューとメンマ、海苔。そしてスープの中にネギとシンプル。
ただ、バラ肉の厚めのチャーシューが小ぶりながら4枚も入っているのは嬉しいところ。日高屋さんのチャーシューって食べ応えがあって美味しいんですよね!
ところで、つけ麺を食べる時いつもやっているのですが、麺の上で冷えてしまっているチャーシューは、スープが熱いうちに沈めて固まった脂を溶かしておくと後で美味しく頂けますよ!私の『タンポポ』的流儀です。
「指輪の爪あと」も、メインになる人数は多くないながら、登場人物はみなキャラが立っています。
特に、まだキャラの固まっていない初期作ということで、後期ではなかなかお目にかかれない「凄むコロンボ」が見られるのは貴重。被害者の浮気相手を、彼の車の中で待ち伏せて、驚く相手に「少し歩こうじゃないか」と呼びかけるシーンなど、ほとんど『アウトレイジ』です。ギャング役者ピーター・フォークの本領発揮!
この後、二度コロンボさんと対決することになるロバート・カルプさん演じるブリマーは直情的な性格を秘めた、しかし沈着な能弁家で、論戦の相手として申し分なし!倒叙ミステリのテンプレとなった名台詞、「君には推理作家の才能があるよ」は、開始52分地点で出てきますからお聞き逃しなく!
普通盛りでも麺1.5玉は見た目以上にボリューミーで、おなかも満足。あっさり系に見えてかなりガッツリなメニューでした!
ガッツリさでは「指輪の爪あと」も劣りません。
「私立探偵が犯人」という意外性、自身の経営する探偵社を動かせることから「コロンボvs組織力」とでも言うべき展開。さらには「コロンボを犯人が買収しようとする」くだりなど、シリーズ第二作にしてここまで挑戦的な内容が織り込まれているのは、とんでもないと感嘆するばかりです。
結果発表!
勝者は………「指輪の爪あと」!!
非常に高いレベルでの接戦でした。
和風つけ麺は後半、麺が水っぽくなってしまったこと、シャバシャバ系なのでスープの温度が冷えるのが早いことから、「美味しさ」のMAXが食べ始め時点にあるのに比べ、「指輪の爪あと」は積み重ねた演出が鮮やかな解決シーンを際だたせており、観終わった後味が非常に良かったことが全体の印象を底上げしたのが勝因と言えます。
ところでこれは本当に謎なのですが、和風つけ麺、お店の前の看板にはでかでかと掲示されてるのに店内のメニューに一切、載ってないんですよ。
今回行った早稲田西口店さんだけの現象かと思いきや、ネットで探すと他にもメニューに載っていないお店があるらしく……秋の訪れにふさわしいミステリーでした。
次回、第二試合は「歌声の消えた海」VSニラレバ炒め定食の異色作対決!
See you next match!!