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風狂奇談倶楽部の活動記録や雑考など

逢隈寧子のグミラー修行道 第0回 グミとグミ世界

はじめに

 初めまして、逢隈寧子(おおくまねこ)と申します。ここでは、グミラー修行中の身である私が、グミに関するあれこれについて、ときに情熱的に、ときに軽率に、好き勝手に自由に書かせていただく所存です。
 とは言え、いきなりグミについて語り出したところで、興味を持って読み進めてくださるのはグミラー並びにグミラー修行中の諸先輩方、ご同輩方に限られてしまうことでしょう。そしてそれは私の本意とするところではありません。そこで、連載初めの今回は「第0回」と銘打ちまして、グミの魅力とは一体どのようなものか、私たちグミ愛好者たちが夢中に噛んでやまないグミというものの本質を探ることによって、僭越ながら広く読者の皆さまのグミへの興味関心を引き出すことを本願といたします。難しい話はありませんので、どうぞ肩の力を抜かれて、お気軽にしばしお付き合いいただけましたら幸いです。

グミの歴史

 はじめにグミの歴史について簡単にご紹介してみます。舞台は1920年ドイツ、ハンス・リーゲル(Hans Riegel)氏が子どもの咀嚼力を高めるためのお菓子を開発し、ボン(Bonn)で会社を設立します。それが、天上天下唯我独尊世界が誇るグミ会社・ハリボー(HARIBO)社の始まりでした。創業2年後には日本でもお馴染みの「ゴールドベア」が製造開始され、ハリボー社は現在もなお世界最大のグミ会社として君臨し続けています。正しく原点にして頂点。全てのグミラーはドイツの方角に足を向けて寝られませんし、ハリボー社のことは敬意を表してハリボー「さん」と呼ばずにはいられないのです。
 日本においては、1980年に初めて明治製菓から「コーラアップ」というグミが発売されました。コーラアップは、一時販売停止となっていましたが、2008年頃からリニューアル発売が始まり、現在では再び全国の店頭に並べられています。日本初のグミが今もなお愛され噛まれ続けているのは、本当に素晴らしいことですね。とは言え、1980年当時の日本ではまだグミというジャンルが普及していなかったため、コーラアップは当初「ゼリーキャンデー」として発売されていました。日本におけるグミの普及に関して非常に大きな役割を果たしたのは、同じく明治製菓から1988年に発売された「果汁グミ」でした。果汁グミは今や日本において間違いなくグミのスタンダード、文句なしの王道であり、有無を言わせぬ絶対的地位を築いていると言えるでしょう。私も大好きです。本当に、明治製菓(現在は明治)さんには尊敬と感謝の念を忘れずに日々生きていきたいと常々考えております。
 日本のグミは絶えず挑戦と進化を繰り返しています。そしてその情勢を見守り、噛み、考察することは全国のグミ愛好者の生きる喜びとなっています。グミを中心としてそれを取り巻く生産者、消費者からなる日本の《グミ世界》――その展望は非常に明るく希望に満ちていると、私は思っています。

グミの定義

 グミの定義は非常に曖昧なのですが、一般には「果汁などをゼラチンで固めたお菓子で、ゼリーよりもゼラチンの比率が高い(=硬い)もの」という認識でよいかと思います。ちなみに、グミという名称は、ドイツ語でゴムを意味するGummiから付けられたのだそうです。
 (ごく個人的には、「表面のつるつるさ《テクスチャー》」「歯を跳ね返す弾力の高さ《バウンズ》」「総合的な噛み心地のよさ《カンフィー》」それぞれを一定水準で兼ね備えたもの以外はグミと認めたくないですと思ってしまう過激派的感情もあるのですが、そういったものはあくまで個人のグミ価値観に過ぎないと弁えておくべきでしょう。無益な定義論争をするよりも、好きなグミについて語り合うことのほうがよっぽど楽しいですよね)

グミの魅力

 この章を書くにあたり、どうして自分はグミが好きなのか、自分はグミのどんなところが好きなのか、を考えてみようとしたのですが、これが予想以上に難解な問でありまして、終いには「グミがグミであるからグミが好き」という結論に至りました。特定の種類のグミについてであれば、好きな点について語ることも随分と容易になるのですが。改めて考えてみると難しいです。ただ、強いて言うなら、「幸福感」でしょうか。グミを食べるだけで幸せな気持ちになることができるので、本当に不思議だと思います。

次回予告

 次回は「第1回 グミとわたし」をお送りします。私たちのグミ世界の発展に比例するかのように、グミの姿は日々多様化の一途を辿っています。そしてさまざまな種類のグミの中には、自分の好みに合うものもあれば、そうでないものもあります。私は、この「グミ多様世界」で生きていくには、まず自分の好みグミの条件について知り、また、グミというものに対する自分の立ち位置をある程度明らかにし、それを踏まえた上で、多様なグミについて考察することが大切なのではないかと考えます。そこで次回は、実際に私自身がどのようにグミと向き合ってきているかについて書きたいと思っています。読者の皆さん自身がグミと向き合うための一助となることができましたら幸いです。ご期待ください!

 

(※この記事は、『風狂通信vol.1』に掲載されたものです。「第1回 グミとわたし(前編)」は『風狂通信vol.2』に、「第2回 グミとわたし(後編)」は『風狂通信vol.3』に掲載されておりますので、ぜひ合わせてお読みください)