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風狂通信web

風狂奇談倶楽部の活動記録や雑考など

半可通のスターウォーズファンが「フォースの覚醒」を観て考えた事──第三回 J・Jの野蛮

石井大海 映画 SF映画 スターウォーズ フォースの覚醒 半可通のスターウォーズファンが「フォースの覚醒」を観て考えた事

あらすじ

半可通の
STAR
WARS

ファンが「フォースの覚醒」を観て考えた事

Issue VI
UPTURN OF THE JJ

風狂殺人倶楽部の石井は、
「フォースの覚醒」の感想と旧三部作の魅力を伝えるべく
スターウォーズシリーズの三部作構成に倣った、
長大な原稿の執筆へと向かった。

劇中では、新共和国の知らぬ間に
ファースト・オーダーは新たな超兵器を開発していた。
それはあの初代・第二デス・スター
遥かに上回るどころではない性能だという事を得意気に説明した。

この究極兵器に済むカイロ・レンきゅんは
一見ダース・ヴェイダーっぽいけどゴミメンタルな中二病
ちょっとした事でもすぐ物に当ってしまうし、
女の子の話になると人間にも暴力を振うのだった……

第一回: fukyo-murder.hatenablog.com

第二回: fukyo-murder.hatenablog.com

帰って来たヤヴィンの戦い:そして一大決戦へ

免責事項:以下、本編とエピソード4のおおまかな展開を割っています。御注意

なんやかんやで〈ルーク・スカイウォーカーの地図〉のデータを得たレジスタンスですが、BB-8が届けたデータは地図の一部分しかなく、復元にはルークと別れて以来休眠中*1機体整備・制御(</rpアストロメクドロイドR2-D2の持っているデータが必要だ、という事がわかりました。 覚醒を期待してかR2-D2に歩み寄るBB-8に、永年R2-D2の相棒だったC-3POがいいます。「無駄だよ、もう彼が起きる事はないんだ」。 旧三部作以来、記憶リセットがありつつもR2-D2の相棒を務めてきたC-3POの台詞と思うと、なんとも胸が締め付けられそうな思いになります。一番目を覚ましてほしいくせに……!正直じゃないんだから……!(´;ω;`)

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……っていうか、「ジェダイ騎士団を再興しようとしたら甥が闇堕ちして全部ぶち壊しにした」というくらいで姿を晦ましちゃうルーク、ちょっとジェダイ騎士としてメンタルゴミすぎでは……?という感じがしないでもない。 とはいえ、ルークは殆んどジェダイ騎士が死滅した後に、通常修行を始めるよりも何倍も遅い時期に、死に掛けのジェダイ二人になんとか稽古を付けて貰って漸く自分のライトセーバーを造った、というような経緯があるので、ちょっと仕方ない所がある。 このジェダイの修行開始時期というのはかなり重要で、新三部作でルークの父アナキン=ダース・ヴェイダーが修行を始めた9歳ですら通常よりも遅いというんで、評議会では修行を行う事に疑義が持たれてたんですね。 それでもオビ=ワンと最高議長(後の皇帝)のゴリ押しで育ててみた結果、めっちゃ強大なフォースの使い手になったけどあっという間に闇堕ちしちゃった、という経緯があるんです。 なので、エピソード5の時点では、緑色でヨボヨボのヨーダも「遅すぎる……」としてルークの訓練に二の足を踏んでいたんです。 この台詞、旧三部作しか公開されていなかった時点では軽く流してしまいましたが、新三部作でのヴェイダーの闇堕ちを踏まえて観てみると、二人の気持ちが痛いほど判るんです*2

閑話休題レジスタンスにとって地図よりも差し迫った問題として、早いとこ反攻に出ないと、スター・キラーでレジスタンスも吹っ飛ばされてしまうという問題があります。 スパイの質がいいのか、「恒星のエネルギーが吸い尽されたら発射してアウト」「吸い尽されるまでの残り時間がこれくらい」という事がご丁寧にもわかり、カウントダウン開始。 しかし、100%絶望的な苦境に立たされているかというとそうでもなく、基地内部のオーシレーターを破壊すればスター・キラー基地は自壊するぞという一点突破、起死回生の一手の存在も示される訳ですね。

この「超兵器の唯一致命的な欠点を狙え!」という展開は、正しくエピソード4終盤の、デス・スターを破壊したヤヴィンの戦いそのものです*3! 4でも、超兵器要塞デス・スターも、唯一の弱点である排気口にプロトン魚雷を打ち込めば爆破できるという事がわかって、発射準備が整えばいつでもスーパーレーザー砲で消滅させられてしまう、という秒読み的状況を敢えて冒してまで総攻撃に打って出るんですね。 この、秒読み状況下でのムリゲー一点突破というパターンをここでも踏襲している訳で、まあこの設定で盛り上がらない訳がない。

そして、ここでかつてファースト・オーダーに所属していた(職歴の大部分が掃除夫だったけどな!)フィンの知識が役に立つという訳です。 まあたぶん、フィンとしては銀河の平和とかよりもレイちゃんに会いたい!という一念しか頭にないような感じがしますが、それはそれとしてハン・ソロとチューイと共に、シールドを解除すべく無理矢理スター・キラー基地に侵入する大役を買って出る訳です。

しかし、この侵入の仕方というのが何とも大味ですごい。 だって、「星全体を覆うシールドの更新レートの隙を突いて超光速で突っ込む」んだぜ? いかにも無鉄砲なハン・ソロの取りそうなハチャメチャな突入方法ですよ。

カイロ・レンきゅん絶好調

一方その頃スター・キラー基地ではというと、囚われたレイをレンきゅんが拷問して地図の情報を聞き出そうとする訳ですが、どうやらレイの方が潜在的に優れたフォースの使い手だったようで、逆に脳内を覗かれてファザコンとグランパコンプレックスっぷりを見抜かれてしまう。 台詞で「ダース・ヴェイダーほど強くない」と言わせてしまうし、ここ辺りでこのレンきゅんが往時のヴェイダーに比べて全く器ではないということが、この女スカベンジャーによって明らかにされてしまう訳です。 しかも、ダース・ヴェイダーは火山の溶岩の中に落ちた状態から復元されたために生命維持のためにマスクが必須だったのに対して、レンきゅんは女の子に「お前マスク外せよ」と言われて外しちゃう。あ、ただのファッションだったんだ……。かわいい……。

もっとも、ヴェイダーも若い頃は激情の赴くままにキレてやんちゃした挙句弱味に付け込まれてフォースの暗黒面ダークサイドに引き摺り込まれた訳であり、まあこうして見ると、メンタルの弱みという点ではスカイウォーカー家の末裔に相応しいといえるかも。

めちゃくちゃ煽られて傷心のレンきゅんが、更になんかデカいヴォルデモートの化物みたいなスノークとかいう最高指導者に油を絞られている間に、レイは近くにいたトルーパーに「ロックを解除して、ドアを開けたまま武器を置いて立ち去りなさい」って云い出す。 当初、当然トルーパーは「何いってんだこいつもっとキツくロックしてやらあ」という反応を返す訳ですが、なんかレイが何度も同じ事を繰り返し言ってる内に、その内容を復唱して、その言葉通りの行動をとって出て行ってしまう。

これは、マインド・トリックと呼ばれる高度なフォースの一種なんですね。 エピソード4でも(こいつ口を開けばエピソード4の話しかしねえな)、タトゥイーンの繁華街モス・アイズリーに向かう途中、オビ=ワンがルークの前で実演して見せてるんですよ。 ルークもオビ=ワンも帝国から追われる身で、当然至る所に検問が張ってある訳です。 そんな検問に引っ掛かってあたふたするルークを尻目に、オビ=ワンは検問係のストーム・トルーパーの顔の前にスッ……と手を翳して「こいつらは問題ない」『こいつらは問題ない』「通れ」『通れ』と心を操って切り抜けちゃうんです。 「心の弱い人間は、フォースで操れるんだよ〜」とルークに語るオビ=ワンの姿、それは正しくカルト宗教の勧誘そのものみたいな感じがしますが、まあ実際にそういう力があるから性質が悪いと言う話で、フォースの力を示す印象的なシーンの一つなんですね。

それを、今度はこのレイにやらせるという訳で、しかもレイはフォースなんて存在すら最近まで知らなかった。 当然マインド・トリックという物があるという事自体も知らなかっただろうし、それなのに何となく出来そうな気がしたからやってみたら出来ちゃった、という、何だかレイは凄いフォースの使い手らしいぞという事を端的に描いたシーケンスな訳ですね。

安易な予測だけれど、実はレイはルークの子供か何かなんじゃないか*4と思うんですよね。 現時点で明瞭にスカイウォーカーの血筋を引く事がわかっているのはカイロ・レンだけな訳で、おそらく今後彼も成長をしていくだろうとはいえ、スターウォーズをスカイウォーカー家の叙事詩としてみたときにその後裔が残念な中二病患者だけじゃ心許ないですし。 あるいは、同じくアナキンの血を引くハン・ソロレイア姫の娘という可能性もあるけど、まあ隠し子にする必要性もないし、そしたら今度はスカイウォーカー家の物語からソロ家の物語になっちゃうか。

……で、マンマと逃げおおせたレイと入れ替わりに説教を受けてショボーンとしたレンきゅんが帰ってくると、拷問部屋はもぬけの殻。 ウオー!!!衛兵!!!!衛兵!!!!!!!!と叫んでまたレンきゅんお得意のライトセーバーで物にアタりまくりタイムが発動!更に廊下を途中まで歩いてきていた衛兵二人組が、レンきゅんのキレ声を聴くやいなや顔を見合せて踵を返すという露骨なナメられ描写!!レンきゅんかわいいなあ……。 ここまできて改めて、このカイロ・レンきゅんという造形はよう考えたなあ、と感嘆してしまいますね。



超免責事項:以下、本編に関してショック死を起こしかねないほどアホみたいに重篤なネタバレがあります。警告はしたぞ








俺はJ・Jを許さない 〜それでもハン・ソロが死ぬべき十の理由〜

その後、ハン・ソロ御一行はフィンのかつての上司をどやしつけてシールドを解除させ、さあレイを探すぞ!というモードに (ところで、初見の時はこの上司があんまりにも従順なのでドロイドか何かなのかと勘違いしてました。なんなんだ……)。 ここで「で、これからどうする?」というやり取りにソロが「ダスト・シュートでも使うか?」と答えて見せるのは旧三部作ファンへの露骨な目配せなんですね。 というのも、エピソード4では最初にソロとルークがデス・スターに拿捕された後、行きがかり上デス・スターに囚われていたレイア姫を救助する流れになるんですが、途中で進退窮まった三人は、レイア姫が思い付きで飛び込んだダスト・シュートの中で変な生き物に喰われそうになったり、壁に潰されそうになったりエラいめに遭うんです。 このシーンは本当に印象的で、幼な心に「ダストシュートの壁に潰されたらやだな……」と思ったものです。

一方でレイはレイで基地内を縦横に逃げ回っていきますが、この過程でメカメカしい広い千尋の谷みたいな場所に出て、その淵を両手で辿っていく。 この「敵陣のメカメカしい崖」シーンも間違いなくエピソード4のデス・スターからで……っていうのはもうそろそろいいかなっていう気分になってきました。 もっとも、メカメカしい崖を手だけで伝っていくシーンはスターウォーズでは何度も出て来て、エピソード1なんかでも出て来るお馴染のシーンで、これをやられたらやっぱりテンション上がっちゃうよな〜〜〜というシーケンスなんです。

そうしている内にソロ一行とレイ一行は合流して、また、シールドが解除されたのでレジスタンスの部隊も基地内に侵入して戦闘を繰り広げて、という所になって、そうだ!オーシレーター近くに爆弾仕掛けよう!という流れになる訳です。訳ですが……。

実は、ここから起こる事について語りたい、というのがこの原稿を書いた動機だったんですよ。 これまで色々と書いて来たのはそこに至る前までの前奏曲というか、まあ、あるいは、書きたいけど書きたくないっていう現実逃避の成せるわざといってもいいかもしれない。

ただ、本題に入る前に一言。

俺はJ・J・エイブラムスを絶対に許さない。
絶対にだ。

……さて。 ソロとウーキーがオーシレーター近くの回廊に爆弾を仕掛け回っていると、そこに、カイロ・レンこと不肖の息子ベン・ソロがやってきます。 (因みに「ベン」というのは、エピソード4冒頭でオビ=ワンが帝国から身を隠していた時に名乗っていた偽名です。)

そのベン = レンきゅんに、ハンがいいます「迎えにきたぞ」。 かつて銀河を救い、しかし息子の躾に失敗して家族がバラバラになり、自分の世界に閉じ籠っていた男。 一度は挫けながらも、再び戦いに巻き込まれ、最愛の妻との再会を経て、息子を連れ戻してまた一からやり直そうと奮起した、銀河一の男がそこには居ました。 冷徹(なつもりだった)な仮面をかなぐり捨て、顔をクシャクシャにして自分の無力さと後戻り出来ない所まで来てしまった事を嘆くベンに、ハンは「まだやりなおせる。お前の為ならなんでもやる」と語り、ひしと抱き合います。 「本当に……なんでもやってくれるんだね?」「ああ」 そして、中二デザインの古式ライトセーバーを父・ハンに渡そうとするベン。しかし──

「ありがとう」そういってレンはセーバーを起動して父を一閃の下に刺し殺してしまうのだった。

……ええ。 何となく、そんな感じはしてましたよ。超いやぁな予感しかしてませんでしたよ!!! だって、そりゃあ、ねえ。 エピソード7としては、ここでハン・ソロが死なない方がおかしいですよ。ええ、そうです、ええ。 何なら、ハン・ソロが死ぬべき理由を十個挙げることだってできますよ。

  1. ここで息子が改心したら一話で終わっちゃう
  2. キャッチーな格好良いキャラが死ぬとエモい
  3. ハン・ソロみたいな旧シリーズの英雄が生き残ってたら新キャラを出す意味がない
  4. 「これは貴様らみたいなエピソード4の話しかしないロートル共のための作品じゃねえんだよ」という事をはっきり示せる。
  5. それによって旧シリーズの煩いファンが退場すれば、この後が創りやすい
  6. ハン・ソロが大好きな旧作のファンたちに大きなインパクが残せる。
  7. 「覚醒」でのハン・ソロの役割がエピソード4におけるオビ=ワンの役割=語り部であるならば、 一話目で道標だけ示して退場するパターンを踏襲するのは必然
  8. ハリソン・フォードギャラが節約出来る
  9. ハン・ソロの死を軸にして、この後のエピソードでお手軽に人間ドラマの展開に立体感を持たせられる
  10. その10はない。

もうね、だからここでハンが死ぬのは必然なんです。仕方がない。 だってエモさからいったら、これ以上のエモはないじゃないですか? 『2001年宇宙の旅』の芸術監督になりそこねた手塚治虫だっていってますよ。 「キャラクターを殺すと読者が感動して大ウケする」って。

だってね……。ハンは逃げてきた物を直視して、これからやり直していこうと、そう決心した直後だったんですよ……。 久々に再会したレイアだって、「You always make me crazy」なんていって送り出して、これから、これからだと思ってたんすよ……。 ハンが殺された直後、遠く離れたレジスタンス基地にいながら、フォース越しにハンの死を直感した、あのレイアの顔……。 無念、無念ですよ……。だって……だってあんまりじゃないですか……。

ハンの死を見て、永年相棒を務めてきたチューイが怒りの余り咆哮し、レンを撃つ、その瞬間の悲哀……。 ここで、チューイからの攻撃をレンが防ぎ切れていないのも、やっぱり本当は父を殺したくなんかなかったんだろう、という、その心中に思いを致すにね……。

ほら……めちゃくちゃエモい……。 もちろん、何でレンはこんなになるまでファザコンを拗らせちゃったのかとか、そういうソロ家の物語の細部を完全に記号に押し付けてしまっているとか、そういう不満があるっちゃありますよ。

でもね、でも。

永年愛していたキャラクターが、再起を誓った途端に殺されちゃうなんて、そんな細部もどうでもよくなっちゃいますよ……。

エモさはまだまだ続きます。

なんやかんやで*5スターキラー基地が大爆発。 崩壊する基地を捨ててファースト・オーダーの軍人たちは逃走*6、戦いはレジスタンスの勝利に終わります。 意気揚々と凱旋するレジスタンスを出迎えるレイア姫。しかし、ミレニアム・ファルコンから、ついさっき共に再起を誓いあった、最愛の夫は降りて来ない。 今やミレニアム・ファルコンの船長となったレイと目で語り合うレイア。こんなに虚しい、やりきれないシーンが、今までスターウォーズであっただろうか。 この先レイアは、どんな悲痛な決意でファースト・オーダーと、かつての息子と対峙していくのだろうか……という感情の波が押し寄せてきた、その。

よりにもよってその、直後にですよ。

プヨピュピーーーとかいって、

何の説明もなくR2-D2が目を醒ましちゃうんですよ。

は????何その御都合主義??????????

俺の感傷を返せよ!!!おい!!!!!!!J・J!!!!!!!!

……いやね、最前からいってた通り、本作は記号に細部を押し付けている所があって、御都合主義なのはずっとですよ。 でも映像が面白いし大枠としてめっちゃエモかったから許されてたんですよ。 このR2-D2の覚醒シーンだって、もっと後とか違うタイミングで挟まれてたら苦笑しつつ許してたと思いますよ。

でもね。それを、ハン・ソロの死の余韻がまだ覚めやらぬ段階で挟み込んでくる、こんな暴力的な事がありますか? 「悲しいシーンだったけど新たなる希望も用意しといたで」っていうつもりで入れたのかもしれんが、余計なお世話だ。 こんな、本当に何の前触れもなく、キッカケすらなく重要な手掛かりが息を吹き返すという、御都合主義の極致とでもいうべき暴力的なシーンを、あろうことかハンの死の直後に持ってきて、お前……お前いい加減にしろよ!!!!

……このシーンの扱いさえ違っていたら、こんなにキレなかったと思います。それくらい、あのシーンの挟み込み方には悪意しかないか、全く何も考えてないと思う。 本当に、ハン・ソロを喪った悲しみに完全に暮れることも出来ず、その感傷をぶち壊しにする理不尽に対する怒りに震えながら、ぼくはレイがついにルークを発見するエンドロール直前まで、ただただ呆然としていました。

そしてエンドロールが始まると、悲しみが堰を切ったようにとめどなく暴発しました。 スターウォーズの壮麗なエンディングテーマが響く中で、ハン・ソロの無念、これまでにハン・ソロが成してきたこと、それに対する仕打ちがこれなのかという怒り、レイアの孤独、もうハン・ソロのニヤッというあのスカした笑顔が二度と画面の中で見られない喪失感……そうした物凄い感情の奔流が、本編が終わった直後からもう身体中を突き上げていく。 ジョブズが死んだ時ですら、ここまで深い悲しみが全身を駆け巡ることはなかった。 劇場で、次から次から湧き出してくる嗚咽を必死で抑えながら呆然と画面を眺めることしかできない……なんていうのは二十余年も生きてきて初めての経験でしたよ。 明るくなってからも、しばらく動けなくて、今年の年賀は喪中にしようかとすら思った程でした。

観客の心を最も大きく揺り動かした作品が最もすぐれた映画であるとするなら、「フォースの覚醒」はなるほど最高の映画と呼べるのかもしれません。 でも、ぼくはハン・ソロに対して、あんな仕打ちはして欲しくなかった。 その一点だけで、ぼくは絶対にJ・J・エイブラムスを許すことが出来ない

何度も言いますが、映画として作劇法上も戦略上もあそこでソロが死なない理由は何一つないし、単に殺しただけだったらここまで僕はJ・Jを憎んだりしません。 その後のフォローが最低すぎる。ハン・ソロという唯一無二の銀河最高のならず者の死の直後に、平気な顔をしてご都合展開をブッ込んでくる。 これでは、彼の死を〈銀河最高のならず者の死〉という単なる記号と感傷に回収させるだけさせておいてそれを適当に出し入れしてるだけじゃないですか! そんなの、ハン・ソロに対する冒涜だ!!!!!!!!!!

……取り乱しました。 でもこんなに悔しいのは、全体として観たときに、記号へのタダ乗りが多用されすぎという所を加味しても、それでも依然としてあの胸踊るスターウォーズの世界を描いており、完全に貶すことが出来ないからでもあるんです。 スターウォーズの世界がそこにあるのは、まあここまで読んで頂けた方々にはおわかり頂けるように、エピソード4のモチーフを縦横無尽に鏤めた変奏曲という結構になっているためでもあります。 エピソード1、2、3での新展開は、スターウォーズ世界の創造者たるジョージ・ルーカス本人が撮ってすら批判されたんですから、続編を第三者が創るという場合に完全に新しいストーリーを組むというのはあまり現実的ではないでしょう。 それに、これから新しく三つ(スピンオフ映画を含めれば五つも!)映画を創るというのに、その入口で実験的な事をして失敗しては目も当てられません。 だから、この展開は完全に順当です。結果的に、私も全体的に観れば満足してしまったし、続編は必ず観に行くつもりでいますし。

それでも……シリーズを代表する英雄の死は、もっと丁寧に扱って欲しかったな……。

まとめと今後の予想

という事で、想定以上に長々と書いてしまいましたし、最後はなんか貶す感じになってしまいましたが、面白かったことは間違いないです。 「面白かった。でも……」の「でも……」の部分が一万字くらいある、というのが現時点でのぼくの中の「覚醒」の評価です。 展開に大いに不満は残るけれども、浪漫たっぷりな映像を魅せてくれたので満足、といった所でしょうか。

まあ、ハンをあんなことにしたからには、次回作はもっと凄い物を観せて貰わないと、今度こそキレますけどね。 「覚醒」は順当に作ってきたので、次回作では旧作を踏まえつつも、もうちょっと物語としても新しい物を期待したいところです*7

まあ恐らく、自戒は終盤で漸く発見されたルーク・メンタル弱者・スカイウォーカーによるレイの修行と、スノークの下でダーク・ジェダイ*8の修行に励みつつ自分の存在基盤に悩むレンきゅん、といった展開になるのではないでしょうか。 そうすると、ルークはエピソード5でいうところのヨーダみたいな立ち位置になる訳ですが、そうすると……。

ともあれ。続くエピソード8での進化に期待、ということにしたいと思います。 あと、「覚醒」を観て面白かった!という方は、是非旧三部作と余裕があれば新三部作も観ましょう。 ここで書いた事以外にも「あ、これってこういう事だったんだ!」とか「あ!このインスマス面、反乱同盟軍にいた!」とか色々発見があるかと思います。

ではでは!

*1:って書くと失恋したみたい。

*2:そういう意味で、エピソード1、2、3が創られた価値はとてもあったという風に、今では思想的変転を迎えています。

*3:ちなみに、スターウォーズ世界の時間軸をメタ的な視点で語る時は、このヤヴィンの戦いを軸にそれ以前をBBY (Before the Battle of Yavin)、以後をABY (After -) として年数を表記する事が多いです。

*4:崩壊前のジェダイ騎士団では文化・人口的にやむを得ない場合を除き、騎士の妻帯は禁じられてたんですが、ルークが修行を受けたのはジェダイ制度崩壊後でそういった旧習は敢えてオビ=ワンもヨーダも教えなかったので、妻帯している可能性は大いにあるんですよ。実際、僕は読んでないですが、「覚醒」製作決定以前に書かれたスピンオフでは結婚するらしいですし。

*5:ハンの死の前になんやかんやで纏められない事があろうか?いや、ない。あ、ライトセーバー戦はよかったと思う

*6:ところで、この「敵方の軍人がちゃんと逃げ出す」というのは帝国軍に比べてファースト・オーダーの合理的な所と云えると思います。エピソード4では、デス・スターの指揮権を持ち、やがては皇帝に謀叛を企てようとしていたグランドモフ・ターキンは、最後までデス・スターを過信し命運を共にします。その結果、皇帝の他にダース・ヴェイダーを抑える事の出来る人間がいなくなり、ダース・ヴェイダーのキレ芸に磨きがかかって帝国軍に優秀な将校がどんどん居なくなっていく訳です。

*7:誰だ、今「新しいことをやったらやったで批判するくせに」っていったやつは!

*8:ここでダーク・ジェダイと呼んでいるのは、広く「フォースのダークサイドの使い手」という意味です。ダークジェダイの頂点に君臨する、正統としてのシス卿はエピソード6で滅んでしまったので、スノークやレンきゅんはシス卿ではなく、「ダース」の称号もついていない訳です。因みに、「ダース」は〈シスの暗黒卿〉"DARk lord of the siTH"の略らしいって知ってました?