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風狂奇談倶楽部の活動記録や雑考など

放送真っ最中!「相棒」シーズン16最速!?レビュー ブログ出張編 第六話「ジョーカー」

風狂webを読んでくださっているみなさん、こんばんは!新入りの荒岸来穂です。
 さて明日はいよいよ文フリ東京ですね。風狂は【Fホール オ―68】でブースやっています!新刊の「風狂通信vol.4.5 『相棒』シーズン16開幕記念特別号」の他にも既刊の発売なども行いますのでぜひぜひお越しください!また翻訳家の稲村文吾さんによる『13・67』で今年話題になった香港のミステリ作家「陳浩基」特集のコピー本も委託販売していますので、既刊の「現代華文ミステリーワールド」とともにお買い求めください!
 宣伝はこのくらいにしておいて今日も早速「相棒」最新話(11月22日)のレビューにいきましょうか。ほんとは僕だって明日に備えて早く寝たかったですが……。
 というわけで今日の相棒は第6話「ジョーカー」。脚本は先週に続いて浜田秀哉さん。

捜査二課の元刑事だった早見という男が警視庁を相手に裁判を起こし、代表として大河内監察官が法廷に立つことになった。早見の妻である幹子が半年前に歩道橋から転落死した事件を警察は自殺と断定したが、早見は他殺の可能性を主張、他殺を裏付ける証人を見つけるも早見が知人に偽証をさせた疑いが出てきて懲戒免職となる。しかし早見はその処分を不当として警察を訴えたのだ。衣笠副総監は処分は妥当だったことを印象付けるため姿を隠している偽証を頼まれた男の捜索を命じる。
そのころ特命係は大河内とともに幹子の死亡事故の真相を探り始める。早見に話を聞いてみると幹子が何者かから脅迫を受けていたようであり、仕事の関係で関わっていた大規模な経営戦略プロジェクトで何か重大なことを知ってしまい事件に巻き込まれた疑いがあるようだ。その情報をもとに特命係は問題の企業のデータを確認すると、データが改ざんされた跡を発見する。幹子の死は自殺なのか、それとも他殺なのか……!


まずみなさんに一言。まだ見てない人はすぐに「ピルイーター」(シーズン2の18話)見て!僕からは以上!
いや、ちゃんとやりますけどね。でもとにかく今回は大河内監察官成分マシマシだったので、「こいつなんでこんなに大河内監察官で騒いでんだ?」と思った人は「ピルイーター」見てください。ついでに「バベルの塔」も見て
大河内さん好きにとってはたまらなかったですね、今回。冠城くんがピルの秘密に気づく場面とかニヤニヤしながら見ちゃいました。あと角田課長との絡みって珍しいですよね、貴重なシーンでした。
そして何よりラストシーン、冠城くんが大河内監察官が裁判にわざわざ出廷した理由を聞こうとするシーン!最後に右京さんが濁した理由が分からなかった人、「ピルイーター」見てください!
今回実はあの連城という弁護士、二回目の登場なんですよね。まさか再登場するとは。でも連城が登場した「ギフト」(シーズン15の16話)なんかより「ピルイーター」を見て!

 

さて、「ピルイーター」の話ばかりだけじゃないですよ。今回の相棒、地味だけど中々の出来でしたね!個人的には今シーズンの今のところのベストかもしれないです。
最初から法廷のシーンだったので今回は法廷劇なのかな?と思ったらそんなことはなく、いつも通り特命係が地道に捜査していくパターンでした。けれども今回は事件の明らかになっていく過程がとても丁寧でしたね。まさに警察ドラマの基本がしっかりしていたと言っていいでしょう。企業や政治家、警察などの腹黒い部分が徐々に明らかになっていく、社会派相棒が得意とするプロットですね。それでいて最後まで幹子が自殺なのか他殺なのか分からせない。さらに真相が明らかになったときに同時に幹子の心情も明らかになって……。
今回、ネタバレになっちゃうんであまり深くは話せないんですけど、幹子の置かれた立場がかわいそ過ぎて……。でもこのキャラの配置がミステリ的に深みを増しています。しかしかわいそう……。

あと今回でだいぶ衣笠副総監と甲斐次長(with特命係)の対立が鮮明化してきましたね。最後の完全に宣戦布告ですからね。シーズンの最初から「今シーズンはこのあたりがメインになってくるんだろうな」とは思っていましたが、意外にも早くそれ絡みの話が出てきたなー。はたして特命係が「ジョーカー」として勝負を動かすのはいつになるのでしょうか……。
……ただ今回、その話はオマケだよな。それなのにタイトル「ジョーカー」なの、なんかアンバランス……。もしかして浜田さん、メインの脚本書いているか輿水さんかなんかに「このあたりで、副総監と対立するメインに関わるエピソードよろしくー」って頼まれたのに「自分、ピルイーターの続編が作りたいです!」って主張したんじゃないかな……(すべて妄想です)(別に今回は「ピルイーター」の続編ではありません、念のため)。


さて、文フリの宣伝のため始めたこの連載も明日でお役御免となるので終了します。もしかしたらこれ以降「相棒」で傑作が出現したら不定期で復活するかも……?読んでくださった皆様、短い間でしたがありがとうございました!
それでは明日、文フリの会場でお会いしましょう!

放送真っ最中!「相棒」シーズン16最速!?レビュー ブログ出張編 第五話「手巾(ハンケチ)」

風狂ブログを読んでくださっているみなさん、こんばんは!荒岸来穂です。今週も今日(1115日)放送された「相棒」レビューをしていきたいと思います。

 

先週のブログで先輩たちが連載をほったらかしていることをネタにしたところ先輩から連絡来ました。さすがに調子乗りすぎたかな……と思ったら

 

「クイーンと日高屋亡き後の連載は任せた!」

 

 いや、続けてくださいよ。何勝手に殺してるんですか

 第一この連載、1123日(木)の文学フリマで発売する新刊「風狂通信4.5号」の「相棒特集」を宣伝するために始めたんですからそんなに長くはやらないですよ。なのでたぶん来週が最後かな?気が向いたらもう少し延長します。

 それでは早速レビューの方に移りましょう。今日はシーズン165話「手巾(ハンケチ)」です。脚本家は浜田秀哉さん。

 

 警察学校で教官を務めている元鑑識の米沢から特命係に連絡が入る。警察学校内でベテラン教官である樋口がテラスから転落、意識不明の重体になっていた。事故か事件か分からないが特命係は捜査に乗り出す。樋口の入院先で娘で所轄の刑事である真紀に遭遇するが、現在伊丹らとともにが捜査をしている変死事件に進展があったとして重体の父親を尻目に去ってしまう。真紀を怪しむ冠城は警察学校内での聞き込みを行い、樋口が転落する直前に真紀と会っていたことが判明する。一方伊丹らが追っている事件に興味を持った右京は樋口が刑事時代に関わった事件が現在の事件と似ていることに気づく。二つの事件と過去の事件の関係は……?

 

 今回の話、良い意味でオーソドックスな「相棒」だったのでは?もともと「相棒を初めて見る人のためのガイドブックを作ろう!」というアイディアのもとに企画されたのが今回の相棒特集だったので、このタイミングでこういう話をやってもらえるとこちらとしてはありがたいですね!

 じゃあどのあたりが初心者向けなのか。まずキャラごとの掛け合いがしっかりしていておもしろい。相棒レギュラーはほとんど登場していたんじゃないかな、今回。それで伊丹さん、芹沢さんは反発しながらも捜査協力したり、中園参事官と内村刑事部長は特命係を目の敵にしながらいつもの責任の押し付け合いをしていたり(中園参事官が内村刑事部長に右京さんのモノマネをして一瞬だけ歯向かうシーンが今回の白眉だと思います)と、それぞれのキャラの立ち位置がしっかり分かるような描かれ方をしていますね。

 あと樋口の警察学校での教え子だった冠城と青木が樋口によって評価されていたり、この二人でモンタージュ作るときのやり取りで意外な性格が明らかになったりするなど二人のキャラがちょっと深まったような気がします。

 ただキャラのことについては一点だけ文句を。米沢さん、最初の5分だけしか出てこないじゃん。予告で出てきたから結構活躍期待していたのに……。前日にシーズン13米沢守最後の挨拶」の再放送してメインで登場すると思わせるの、これ詐欺でしょ

 

 気を取り直して初心者におすすめの理由その二。それは「相棒」らしい刑事ドラマだったことです。これは個人的見解ですが、「相棒」が警察内部の話をするときって「刑事としてのプライド」と「警察内に潜む闇」の激突という構図が多いと思うんです。しかも過去の事件が現在の事件と関係していたりすることもしばしば。今回もまさしくその通りでしたね。刑事としての「矜持」がこういう話の見所ですが、今回はそれをタイトルの「手巾(ハンケチ)」で表していましたね。最後の右京さんの「警察官をなめるんじゃない!」というセリフも刑事の矜持が感じられてよかったです。

 

 ミステリとしては最後の謎解きよりも捜査の時点でほとんど事件の構図を明らかになってしまうのでちょっと物足りない感じもするから飛びぬけて面白い!とは言えないですけど安定しているので「良い意味でオーソドックス」という評価を下しました。入門向けということでどうでしょう。

 

 ところで今回の脚本を書いた浜田さんは「相棒」の脚本は初めてみたいですね。初めてとは思えないほど「相棒」の勘所、というか型はしっかり押さえているという印象を受けました。

 昔、ある先輩が「最近の「相棒」は昔たくさん書いていた脚本家はほとんど書いてないし、新しい脚本家ばかりだから最早二次創作なのでは?」と言って最近の「相棒」を批判していましたが、でも僕は今回の作品は「二次創作」かもしれないけど今までの「相棒」をしっかりサンプリングしていてそのおかげで出来がよかった、という風に思っているので「二次創作」でもいいんじゃないかなと感じました。「型」が出来てない状態で変にオリジナリティ出されるよりはいいかな、という考えですね。浜田さんはこの一作でちゃんと「型」が出来ていることがわかったので、次書くとすれば今度は逆にどのようにオリジナリティを出すかなと注目しています。というわけで浜田さんはぜひ脚本陣に加わってほしいですね

 

 さて次回はみんな大好き(?)大河内さんが法廷に立たされるようですね。ここ最近存在感を増してきた衣笠副総監も出てくるようなのでそこも要チェックです。それではまた来週。

放送真っ最中!「相棒」シーズン16最速!?レビュー ブログ出張編 第四話「ケンちゃん」

「相棒」シーズン16最速?レビュー

第四話「ケンちゃん」 脚本 金井寛

 

 風狂ブログを読んでくださっているみなさん、初めまして!風狂に新人として入った荒岸来穂です!何度か座談会などには参加させていただいてはいたのですが、ブログで記事を書くのは初めてなので以後お見知りおきを。

 

 さて11月23日(木)に文学フリマ東京で販売する『風狂通信4.5号』は絶賛シーズン16放送中のドラマ「相棒」特集です!そこで僕が最新シーズンのレビューを担当することになったのですが一つ問題が出てきまして……。

 

石井さん「じゃあ原稿の締め切りは11月2日まででお願いします」

僕「あれ、それじゃシーズン16のレビュー第三話(11月1日放送の「銀婚式」)までしか載せられないですね……」

石井さん「たしかにちょっと物足りないかもね……」

 

そんなことを話しているうちに

 

白樺さん「だったら残りは文フリまでブログに載せよう!

秋好さん「宣伝にもなるし。放送日中にすぐアップしよう

 

……とまあ、新人に対する扱いがすごく雑なためにこうして毎週その日のうちにブログを更新することとなったのです。

 

というわけで、これから毎週水曜日に「相棒」の最新話レビューを僕が連載していきます。(4話より前のレビューは『風狂通信4.5号』全て載ります)とりあえず文フリが行われるころまでは続くと思います。まあ、クイーン読む企画やらコロンボ日高屋戦わせる企画みたいに途中で投げないように頑張ります!

 

 

では与太話や先輩に喧嘩売るのはこのくらいにして、早速レビューの方に移りましょう!

今日の相棒のサブタイトルは「ケンちゃん」。脚本家は金井寛さんです。

 

冠城がコンビニで知り合った店員、森山健次郎が殺された。森山の証言によって逮捕された窃盗犯の宍戸が最近仮出所し事件現場付近で目撃されており、捜査一課は宍戸に目星をつけて捜査していた。特命係は森山の手に書かれた「中」のような記号に注目する。森山の兄に話を聞くと森山が中井小百合という女性に好意を寄せていたが振られたことが判明する。一方森山が最近大学の数学科に潜って授業を受けていたことが明らかになる。教授の中垣と講師の服部は森山の数学的才能を絶賛するが森山は中卒で高等教育を受けてないはず……。ケンちゃんの才能に秘められた秘密とは……?

 

 

……いや、「秘密とは……?」って書いたけど、秘密も何もなかったな……。ケンちゃんのキャラ「A○○RU」っぽかったし……(個人の感想です)。たぶん○○〇〇の認知度も上がってきているし、これで話を引っ張るのは無理があったんじゃないかな……。ダイイング・メッセージの方も無理がありましたね。放送前に予告を見た友人と話したときも「いやどう見ても「中」じゃなくて「」にしか見えないじゃん」という話になりました。金井さんはシーズン12の2話「殺人の定理」でも数学とダイイング・メッセージを扱っていましたけどお気に入りなんでしょうか?

 

予告の話が出てきましたけど今回の話、正直予告見た時点で上で二つの点は予測できちゃうんですよ、そのためあまり驚きがないんですよね。たしかに犯人特定までにもう少し話を捻ってはいるんですけどね、ただ「それで犯人特定していいの?」という気もしますし。しかも我らが白樺さんは「登場人物の立ち位置からして○○が犯人」って放送20分段階で予測のLINE送ってきて、しかもほんとに正解しちゃうという。そういうところも含めて意外性があまりなかったですね。

 

犯人の動機もなんだか唐突に感じてしまいました。なんだか型にはまったみたいな動機で……。たぶん犯人ともう一人ケンちゃんをよく思ってない人の身勝手さと、ケンちゃんの人のよさを対比的に描こうとしていたんですけど、どうも妬んでいる側の人たちの描かれ方が雑すぎて陳腐に見えちゃったように思えます。

 

一方ケンちゃんの性格とそれに好感を覚えて犯人に対して熱くなる冠城くんはよかったですね。たぶん冠城くんの思いとかを深く掘り下げたり、反対に犯人たちがケンちゃんへの秘めた敵意とかをチラつかせながら話を進めたりした方が、数学とかのガジェットとかに頼らずとも人間ドラマとして面白かったのではと思ってしまいます。

 

なんだか思っていたより辛口になってしまいました……。前回の「銀婚式」が人間ドラマとしてよく出来ていたのでそれと比べちゃうと……というのもあるかもしれません。

次回は警察学校が舞台ということで米沢さんが久しぶりの登場ですので楽しみにしています。それではまた来週!

「新本格という病」プチ読書会

秋好「今更ですが、『CRITICA』第12号に評論「新本格〉という病」を寄稿しました」

石井「ちゃんと買いましたよ」

「CRITICA」:探偵小説研究会
http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/critica.htm

秋好「まずそもそも、探偵小説研究会で「新本格ふりかえり座談会」をしようという話があったんですよ。で、それに備えるため、風狂でも事前に勉強会を行なったんですけど、座談会は自分の力不足が大きく、個人的には望んでいたような内容にならなかった。そのフラストレーションを込めて書いたのが、この「〈新本格〉という病」ってわけです」

白樺「いきなりだけど、内容について質問。議論の前提として、現在の本格ミステリにジャンルをドライブする一体感がなくなったということが言われているけど、そもそも何で一体感が必要なの?」

秋好「『21世紀探偵小説』の飯田一史さんの序論のことだよね。そんなに変なこと言ってる?」

白樺「変なことは言ってないし、かつてジャンルにそういう盛り上がりがあったのは間違いないと思う。でも本当に盛り上がりの場がないとダメなのか?という話。それがなくなったからといって、何かが死んだわけではない」

秋好「そもそもジャンルとしての盛り上がりが必要かって話?」

白樺「一つの方向に向かっていく必要があったのかっていうこと」

秋好「別に新本格ムーブメントにしろ、その後の九〇年代のミステリシーンにしろ、一つの方向に向かっていたなんてことはないでしょ。ジャンルは決して一枚岩ではなく、様々な対立軸があって、そのこと自体がミステリ界全体の盛り上がりになっていた。それを踏まえて〈ドライブ感〉と呼んでいるわけで」

荒岸「ドライブ感がなくなったということでいえば、巻頭の「新本格三十周年ふりかえり座談会」でも、秋好さんは〈X論争〉が最後のお祭りだったと言ってますね。X論争以降に華がなくなったとは、自分も思ってるところです」

秋好「そのあたりまでは、ジャンルとしての盛り上がりを示す場が存在した。そしてその場とは、批評の場でもあったと思うんですよ。新本格ムーブメント以降、批評の軸は島田荘司笠井潔の影響下で形成されていたのが、その影響力が次第に薄れ、やがて場自体がなくなってしまった。何故影響力が薄れたのかは、検証の余地があるけど」

白樺新本格の親殺しというやつね」

秋好「X論争の際に巽昌章さんが指摘していたのは、「この十年余り笠井潔のもとに培われてきた批評の言語が、一気に機能不全に陥るかもしれない危機」。それに対して千街晶之さんは、いっそ機能不全になったほうが新たに生まれてくるものもあるのではないか、と書いていたけど、いまだに荒涼たる地平はそのままで、〈新種の花〉は現れていないのではないか」

石井新本格ムーブメント=第三の波を構成していた批評的枠組みが死んでいるのに、そこに対する考察なく、新本格三十周年といっていいのか」

荒岸「以前、『双頭の悪魔』で読書会をやったんですけど、そのとき後輩が「新本格というよりも本格だと思った」という感想を述べていました。もはやムーブメントではなく、カテゴリ名だと思ってる人の方が多い。歴史的経緯を踏まえずに、新本格という用語が独り歩きしているように感じます」

石井「だからこそ、「新本格という病」を再起動しないといけないって話ですよね」

荒岸「一九八七年以前/以後で切断を入れることによって、ミステリ史の豊饒な過去がスーパーフラット化し、新本格ムーブメントが第三の波と定義された、というのはその通りだと思いました」

秋好「整理しておくと、新本格=第三の波とは、切断とスーパーフラット化によって創出された空間だと考えていて、それを〈病〉と呼んでいるのだけど、現在は病名だけが残って、症状が忘れられている。だからこそ、単に懐古するのではなく、新本格とは何だったのかを構造的に論じる必要があると思うんですね。笠井理論とは別に、歴史的な縦軸と同時代的な横軸、その両面から捉えてみたいな、と」

荒岸「同時代的には、新本格とはアマチュア(素人)の台頭という文化的潮流の一事象という捉え方をされていますよね。そこで例えば〈渋谷系〉やヒップホップカルチャーのサンプリング文化を、アマとプロの区分の崩壊という話に繋げていますが、新本格の終焉の要因をそこに見出すことができるのでは?」

白樺「サンプリングはもうできない?」

荒岸「いったん歴史性を剥いで配置しなおすのがサンプリングじゃないですか。でも、歴史性を剥いで配置し終えてしまったら、そこには剥ぐための歴史性がなくなってしまう。そうすると、サンプリングの対象となるネタがない」

秋好「サンプリングという方法論の他に、アマチュアの台頭の例として、論稿内では第二次バンドブームや女子大生ブーム、とんねるずを筆頭としたお笑い第三世代に、ニューアカブームなどを話題にしたけど、そこに書いてないものとして思い付くのが、まずコミケですね。第一回が一九七五年に開催されて、徐々に規模を大きくしていった。プロとアマの垣根がなくなる土壌が、そこですでに形成されている。もう一つは、『このミステリーがすごい!』の開始。日本推理作家協会の会員が投票していた『週刊文春』のミステリーベスト10に対し、プロアマ入り乱れて本当に面白いものを選ぼうということで作られたのが『このミス』だから」

白樺「アマチュアリズムって二つあるんだよね。ひとつは、「プロじゃない」立場だからこそ既製の枠組みを外れたことができるよ、新鮮な表現ができるよ、という、内野から見た期待感としてのアマチュアリズム。もうひとつは、「こういうのだったら俺でも出来るんじゃない?」っていう、外野から見た参入可能性としてのアマチュアリズム」

石井「でも、なぜ七〇年代から八〇年代にかけて、アマチュアの台頭が起こったのかな。僕らが中学生、高校生のころにも、ネット発でアマチュア的なものが盛り上がっていたけど、そのころと質的に同じなのか、違うのか」

白樺「レーベルに金がある時代は冒険がしやすいって話じゃない?バブル期は金があったから、テレビ局も出版社も素人を使って冒険的な企画ができた。ゼロ年代もやっぱり景気が回復してきたからかな、と」

秋好「高度経済成長を経て日本全体が豊かになったことで、文化的な格差が小さくなくなったというのはありますよね。それまで垣根があったからこそ、素人を引き上げて使うということに面白さがあった。もっと言うと、素人の時代が訪れたというのは、つまるところリアリティレベルが変質したということでもある」

石井「というと?」

秋好「ライムスターの宇多丸がラジオでAKB48のドキュメンタリー(『Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』)を論じたときに言ってたことだけど、日本アイドル史というのは、何がリアルかということの変遷であると。八〇年代は旧来のアイドル像がリアリティを失っていて、ぶっちゃけるほうがリアルという時代だった。要するに、おニャン子クラブとか、キョンキョンとかね。それがやがて、岡田有希子の自殺という圧倒的なリアルで臨界点を迎え、次第にアイドルよりもスキル主義のアーティスト志向な時代になっていく。同時期にプロレスでも、リアルファイトを謳ったUWFから始まって、Uインターやリングスの流れで、総合格闘技と交わるリアル路線が盛り上がっていったわけでしょ?新本格がムーブメントになりえたのも、そのアマチュアリズムが当時のミステリシーンでよりリアルだったからだと思う」

白樺「体験していない時代のことを言うのもなんだけど、八〇年代にはまだマスメディア、テレビとか雑誌とかに誰もが権威を感じていて、メディアが〈素人〉を見出す、引き上げるって構造が成立していたと思う。それが、九〇年代から陳腐化していくとともにネットインフラが整備されて、〈素人〉が、旧来のメディアを介さずに自分から何かを発信できるようになったのが大きな節目だったのは間違いないよね。私はメディアに権威がなくなったとは思わないけど、役割は〈発掘〉から〈承認〉に変わったんだろうなと感じてる」

石井「そういった権威やアマチュアリズムの変容の中で、ミステリはどう変わっていくのか、っていう話だよね」

秋好「で、話は変わって、縦軸としては柄谷行人の〈六十年周期説〉を援用しています。説の具体的な内容は「一九七〇年=昭和四十五年――近代日本の言説空間」を読んでいただくとして、ごく簡単にいえば、昭和は明治を反復しているが、昭和が長く続きすぎたあまり、昭和は昭和に回帰してしまったということが書いてある。笠井潔の大量生/大量死理論だと、新本格は戦後本格の螺旋的反復という解釈だけど、六十年周期説という見方をミステリにも適用すると、ちょうど戦前の乱歩を中心とした探偵小説ムーブメントを反復していることになるのではないか」

荒岸「でも、歴史学をやってる人間から言わせてもらいますと、縦軸をそういう形でまとめるのは実証的にだいぶ危うい。実証性にケチをつけるのはナンセンスかもしれませんけど、サイクルの原理がわかりにくいので、どうしても力業に見えてしまいます」

秋好「もちろん僕も、六十年周期説が実証的に正しいとは思ってないですよ。ただ、新本格史観を崩すためにも、笠井理論以外の切り口を早急に提示しなければならないな、と。戦前に乱歩がジャンルを確立し、戦後は横溝正史の活躍で盛り上がっていたのに、松本清張の登場で社会派の時代になって、新本格ムーブメントが起こるまで、本格は長らく冬の時代が続いていた……みたいな史観が、意外と蔓延してしまっている」

荒岸新本格史観をいったん崩さないといけないという意図は、確かに理解はできるんですけど、とはいえやはり、目的論的な歴史観には抵抗があります。パッケージを借りてきて崩しても、それはちょっと……」

秋好「荒岸くんの批判はよくわかるし、仰るとおりだと思います。ただ、別に六十年周期説に固執してるわけではなくて、あくまで一例というか、こういう見方もできますよっていうのを示したかったのね。実証的にどうなのかって点では、それこそ大量死理論だってそうだし。僕の狙いとしては、この六十年周期説をさらに批判するような形で、現代本格を歴史的に位置づけていければいいなと思ってます」

石井「〈第三の波〉とか〈脱格系〉みたいに、今の潮流を表現する新しいタームがあるといいね」

白樺「最初にちらっと言った、「そもそもジャンルの一体感って必要なの?」って話にもつながるんだけど、クリエイターの在り方と同じくらい、ファンの在り方も変わってると思うんですよ。秋好くんが「アイドル像の変遷」に言及したのに便乗すると、よく「安室奈美恵が最後の『国民的歌姫』だった」って言われるじゃない。一家に一台のテレビを家族みんなで見ていた時代には、たぶん〈国民的なもの〉はあり得たんだけど、テレビが一人一台になって、さらに検索エンジンSNSで、自分が知りたい、自分にとって好ましい情報はいくらでも手に入れられるし、それ以外はシャットアウトできるようになった90年代後半以降は、きっと〈時代の一体感〉ってイメージ自体が古くなっちゃったんだよね。歌謡曲やテレビ番組の潮流と小説を一緒くたにはできないかもしれないけど、最近の若手のミステリ作家さんたちを考えると、世代で横並びなキーワードがあるっていうよりも、それぞれが自身のカラーや系譜(どんな作家・作品の影響下にあるか)をビビットに打ち出して「こういうのが好きな人寄っといで!」って見せる売り方が共通してるのかな、って気がしていて」

秋好「最後の国民的歌姫は浜崎あゆみ宇多田ヒカルじゃない?まあそれはともかく、確かに若手作家をひとくくりに論じるということは、現代では困難ですよね。〈ポスト・トゥルース〉派とか呼べればいいんだけど」

白樺「絶対呼ばれたくないでしょ」

(文責:秋好)

ジョルジュ・ペレック『53日間』について(秋好亮平「ジョルジュ・ペレックと後期クイーン的問題」拾遺)

秋好です。

半年もブログを放置していきなり宣伝ですが、探偵小説研究会『CRITICA』第12号の特集「新本格の30年、社会派の60年」に評論「〈新本格〉という病」を寄稿しました。

巻頭の「新本格三十周年ふりかえり座談会」にも参加しています。

「CRITICA」:探偵小説研究会

http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/critica.htm

「CRITICA」第12号 目次

http://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/critica_12.html

夏コミ2日目(8/12)に頒布しています。
スペースは東3キ05bです。

で、「〈新本格〉という病」についてはまたいずれ記事にするとして、実は秋好は前号の『CRITICA』にも「ジョルジュ・ペレックと後期クイーン的問題」という論考を載せていただいているのですが、今回はそちらの紹介というか、そこで触れなかった点について落穂拾い的に補足したいと思います。

53日間について

さて、「ジョルジュ・ペレックと後期クイーン的問題」は、題目どおり、フランスの小説家であるジョルジュ・ペレックの作品を探偵小説として読むことで、現代本格ミステリにおける後期クイーン的問題への新たな対応策を示す、というのがその論旨です。まだ後期クイーン的問題とか言っているのかと呆れられそうですけど、それはさておき、そこではペレックの遺作となった未完の長編『53日間』を中心的に扱っています。

日本で『53日間』を紹介している文章としては、福田育弘「ペレックの探偵小説を探偵する」(『ふらんす』65)や若島正『殺しの時間 乱視読者のミステリ散歩』、そして殊能将之のreading diary(『殊能将之読書日記 2000-2009』)などがありますが、拙稿以上に詳しく内容を紹介したものは恐らくないでしょう。なにせ、物語の筋や犯人をほとんど明かしてしまっているのだから(無論、必要あってのことですが)。とはいえ、すべてを説明してしまったかといえば、そんなことはまったくないですし、もとより『煙滅』や『人生使用法』の著者の作品に関して、物語の筋を追うくらいで説明し尽くせるわけがありません。

※以下、『53日間』の部分的なネタバレを含むので、将来的に読む可能性のある人はご注意ください!

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風狂的「年末ミステリ・ランキングを振り返って」

2016年12月17日、新宿某所。

そこには、今年度のミステリランキング本を広げながらケーキを啄ばむ、怪しい男たちの姿があった――

 

石井「去年の夏以来の座談会だね」
秋好「そうですね。この間、風狂も『本格ミステリ・ベスト10』の投票権をもらったり色々ありましたが、しがらみ関係なく無責任に語る場をまた設けたいなと思いまして、今回こうして集まってもらったわけです」
石井「ところで、白樺先生がいないけど?」
秋好「去年しゃべり過ぎてパージされた説……。でも、その代わりと言ってはなんだけど、今回は後輩の現役ミス研員3名に来ていただきました」
吉川荒岸霧越「よろしくお願いします」
石井一家言ありそうなメンバーで頼もしい」
秋好「まあメンバー的に、本格ミステリ中心に話していきましょうか。一応各自、今年度のベスト5を選んでもらってきたんだけど――それじゃ荒岸くんから時計回りで」
荒岸「わかりました。風邪のため、あまり喋れませんが」

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11月24日は「童貞の日」~雑学「初めて」物語!(執筆者:白樺)

11月24日は『童貞の日』
1994年、当時の人気ラジオ番組「伊集院光のOH!デカナイト」内で制定されました。大正3年のこの日、高村光太郎の第一詩集『道程』が出版されたことに因みます。クリスマスイブの1ヶ月前という皮肉な日取りがポイントですね。

1日遅れてしまいましたが、今夜はそんな「童貞の日」を記念して、古今東西「初めて」雑学を書き連ねていきたいと思います!できる限り、既存のまとめサイトなどには載っていなさそうな「チェリー雑学」を集めました!

 

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